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通常、設備投資額の2〜3割程度に相当する年間固定費が増加するといわれるが(製造業の場合)、本例では減価償却耐用年数が20年と長期償却物件であるため、固定費の増加は約18%におさまる。
当社の変動費率は70%である。この場合、400百万円の設備投資により、ほぼその61%に相当する売上高の増加243百万円(年間べース)を今後継続的に確保しなければならず、これが未達の場合は、投資前の利益を割り込む結果となる。
増加固定費をまかなう売上高=73百万円÷(1−0.7)=243百万円
B 返済能力の検討
本ケーススタディーでは、フローティングドックを稼働させることにより、280百万円の売上増があった場合を想定し(下表参照)、返済能力を検討する。

フローティングドック新設に伴う新規受注工事(推定値)

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上記売上が達成された場合、設備投資後の売上高は623百万円+280百万円で903百万円となる。これに対して費用は次のようになる。
設備投資後費用
売上高903百万円×変動費率70%+固定費(設備投資前183百万円+設備投資による増加73百万円)=888百万円
ゆえに設備投資後の利益は、
利益=売上高903百万円一888百万円=15百万円
利益課税分を考慮する。仮に法人税等の課税率を45%とすると、利益に課せられる法人税等は
法人税等=15百万円×45%=6百万円
当社は利益配当及び役員賞与等の社外流失を行っていないため、以上により設備投資の返済余力は次のようになる。
返済余力
税引後利益9百万円(利益15百万円−法人税6百万円)+減価償却費18百万円=27百万円
B社では、本件設備投資時には他の借入完済済みにより長期借入金は本件のみとなるため長期借入額は300百万円となる。これを単純に上述の返済余力27百万円で割ると、
300百万円÷27百万円=11.1(年)
となり、ほぼ11年で返済できると判断される。

 

 

 

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